【不正咬合を考察】歯並びは遺伝する?実験結果からわかる家庭での対策方法
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カテゴリ: 歯科コラム 歯科矯正
生物の全ての形質は遺伝的要因と環境要因によって決定されています。
人の歯並びはどのくらい遺伝するものなのでしょうか?
人間においても、子どもの身長や骨格をはじめ性格までも親に似て遺伝的することが経験的にも理解できます。
一方特に新生児期から乳幼児期までの栄養状態や家庭環境によって、これらの形質に影響を及ぼすことも明白です。
不正咬合の原因
最も多い不正咬合を生じる原因は、歯を受け入れる顎の大きさと、歯の大きさの不均衡によることが最も多く、咬合(咬み合わせ)という形質も遺伝的要因と環境要因で決定されることが多くの臨床例で理解できます。
マウスによる実験
不正咬合を治療するにあたり、不正咬合の成因を知ることはとても大切です。
顎の大きさと、歯の大きさの異なる遺伝子のバックボーンが一定な複数種のマウス(近交系マウス:兄妹交配または親子交配を20世代以上継続させることによって、遺伝形質を均一化させたマウス。全ての遺伝子において父と母由来の対立遺伝子がほぼ100パーセントホモになり、個体差が少なく、再現性に優れ、遺伝研究において多様されるマウス)を用いて、環境要因を一定にして継代飼育し、顎の大きさ、歯の大きさがどのくらい遺伝するか、また、1種類の近交系マウスを用いて、環境要因を変えて継代育成して環境の違いと咬合の関係を調べた研究があります。
結果
下顎の大きさが異なる複数の近交系マウスを交配したところ、下顎の長さは下顎の長さが大きい親マウスに優性であることが分かり、下顎の大きさを制御している主たる遺伝子はOTX遺伝子であることが明らかになっています。
OTX遺伝子とは個体の発生過程で体軸のパターン形成で機能する遺伝子の1つで、上顎と下顎、耳の骨の形成に関与しているといわれるものです。
現在のスイス領内に発祥したドイツ系の貴族の家系で、中世の血縁制度を利用した政略結婚により広大な領地を獲得したハプスブルク家があります。
この一族は皆下顎が大きいことでも有名ですが、マウスの実験とも一致しますね。
また、歯の大きさの異なる近交系マウスを交配させ、歯の大きさも遺伝し、歯の大きさを決定する遺伝子と、顎の大きさを決定する遺伝子が異なることも、同実験から明らかになっています。
一方、同一種類の近交系マウスにおいて歯を抜いて粉末を与えたマウスと、歯を抜かず固形食を与えたマウスをそれぞれ継代飼育したところ、歯をぬいて粉末食を与えた子孫は下顎が小さくなりました。
遺伝要因は変えず、咀嚼という環境要因を変えたところ、顎の発育に大きく関与していることが明らかになりました。
まとめ
人間においても顎の大きさを決定する遺伝子と、歯の大きさを決定する遺伝子は異なることから、不均衡による不正咬合が発現します。
また、歯が喪失して柔らかい食品を多くとる子どもは、顎の成長に影響することが明らかになっています。
歯を大切によく噛むことが、子孫の代まで健康なお口を維持するために大切ですね。
ご家庭で気を付けて頂きたいこと
最近の子どもたちは、あごが小さくかむ力が弱いという言葉をよく耳にします。
食の欧米化、偏食など、子どもを取り巻く栄養、食生活環境の問題が指摘されています。
厚生労働省が発表した平成17年度乳幼児栄養調査では、「よく噛まない子」は平成10年度では12.6%でしたが、平成17年度では20.3%に増加しており、よく噛まないことにより、学力や運動機能の低下、および心理的問題になることが報告されたそうです。
このような背景から、食を通して機能的かつ健康な口腔を維持することにより全身の健康を増進していこうという、食育基本法が施行されました。
現在では、家庭、教育機関などでも「見て楽しみ、よく噛み、そして味わって食べること」が再評価され、見直されています。
よく噛むこと
本来噛むこと、咀嚼とは、口の中における食物を上下のあごの歯で噛み砕唾液と混ぜ合わせて嚥下しやすい大きさと硬さの食塊をつくる運動のことです。
胃の中での食物の消化吸収を助け、咀嚼機能と連動し、舌やあごの運動顎の大きさ、筋肉、味覚が発達します。
ですから、食物を噛まずに、顎が鍛えられないと、歯を支える顎の骨や、筋肉の発達が阻害されることになり、顎顔面の形成に悪い影響を及ぼします。
さらに、大人の歯(永久歯)への交換期にある子どもたちへの歯並びに影響がでます。
それだけにとどまらず、歯並びが悪いと食べ物が詰まりやすく、歯ブラシがしにくくなり、虫歯や歯周病の原因になります。
それだけ噛むことは成長期の子供において大切なことなのです。
食物の香り、味わいも広がりますし、満腹中枢を刺激すので、肥満予防にもなりますね。
また、家族や友人と一緒に食事をすることはコミュニケーション能力向上にも大切です。
先日、娘の保育園に用事があり、給食の時間を一緒に過ごす機会がありました。
保育園では、食前に、その日の給食に使われた野菜を、手にとり触らせお話をして下さっていました。
また、園庭で栽培したゴーヤを夕食に出したところ、苦いと言いながらも興味深く食べてくれ、楽しい食事となりました。
私自身、子育てを通し、季節のものをよく噛んでたべる、食育の大切さを再考させられる日々です。
皆さんお忙しい中で子育てをされ、お食事を作っておられると思いますが、子どもの噛む習慣は野菜を少し大きめに切ってよく噛んでもらうなど、ちょっとした工夫を取り入れていただくだけで変わるので、是非試してみてください。
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